第2章 『泡沫の君に永遠の青を』 五条悟
数日の船旅を経てたどり着いたその島は、五条たちの予想を大きく裏切る場所だった。
一見するとどこまでも透明な海と、生い茂る木々の緑が輝く美しい離島。
「へぇ……『甚大な被害』って聞いてた割には、案外綺麗なとこじゃん。海も青いし」
船から降り立った五条は、サングラスを少しずらして周囲を見渡した。
「ああ、だが油断はできないよ。……まあ、急ぐ旅でもない。ゆっくり観光がてら聞き込みをしつつ、任務をこなすとしようか」
「傑、それ完全に旅行気分だろ。ま、俺は美味いもん食えりゃなんでもいいけど」
あくびをしながらついてくる五条を横目に、夏油は港にいた年配の漁師に声をかけた。
非術師に「呪霊」や「呪術」なんて専門用語を使っても通じない。
夏油は言葉を選びながらそれとなく怪異の噂を探っていく。
「すみません、少しお話しをお伺いしたいのですが。この島で最近、奇妙な事件や恐ろしい出来事が起きなかったでしょうか? ……『怪しい女』を見かけたとか……」
すると、それまで穏やかだった漁師の顔が、一瞬で恐怖と忌々しさで歪んだ。
「怪しい女……? お兄さんたち、旅人なら余計なことには関わらんほうがいい。あれはただの人間の女なんかじゃない……『人魚の呪い』だ」
「人魚……?」
夏油が首を傾げると、近くにいた他の島民たちも口々に集まってきた。
「そうだ! 少し前にな、島の若者が一人、あの人魚に呪い殺されたんだよ!」
「それだけじゃない! その後、人魚の野郎が三日三晩も島を呪ってなぁ……恐ろしい嵐と雷で、家も畑も滅茶苦茶にされたんだ!」
怒りと恐怖を露わにして捲し立てる島民たちの言葉を、五条は耳をほじりながらだるそうに聞いていた。