第7章 再び〜
「ご紹介いただいて、ありがとうございました。
今回、オーナーからの紹介だから初めて取材許可を出した、地元客を大切にしたいと店主さんがお話しされてました。」
「儲けに走らない隠れた店はまだまだありますよ。自ら門戸を閉ざしているわけではないんです。流行りや希少性を利用した優越感を満たすためだけに利用されたくない、
長年のお付き合いを大切にし、お客様がこの方だったら紹介してもいいとお客様自身が店の価値を理解できる方をふるいにかけてくださる。私たちはその気持ちに応えるため、自分の成長のため、頭をひねり、試行錯誤し、個々人のスキルを上げる。そうしていると無駄に荒らされずこちらも荒らさない。無理なく心地いい繋がりが続いていく。そういう商売をしているんだろうと思うし、少なくとも私自身はそうです」
旅館取材で特に感じていたのは全ての旅館がもてなしの心に溢れていたこと、杓子定規なサービスではなく客ひとり、ひとりに気に配っているから自然と兆候を見逃さず一歩先の対応をする。
そしてそれは“たまたま”“偶然”のようなカタチで表現されるからほとんど気づかれない。
パフォーマンスのもてなしではなく、本質のもてなしだった
さあ、どうぞとドアを開けてくれる
礼を言って車を降りる
当時と変わらず美しく、凛とした佇まいの建物を目にし記憶が甦る
スーツケースを手に「ご案内いたします」と姿勢を正し、丁寧に頭を下げる。先ほどまでのリラックスした雰囲気からおもてなしモードに切り替わっている
プロ意識、流石です
ウェルカムドリンクをいただきながら案内を待つ
深呼吸
建物の中で気持ちいい深呼吸ができるところは少ない。当時と同じ感覚とさらに今日は柔らかさを感じる
スーツに着替え、身も心もお仕事モードになったオーナーにお待たせしました、ご案内いたします。と声をかけられる。促されるままついていく
移動中、取材条件などの打ち合わせをする
案内されたのはあの時と同じ、最上階の特別室
「あ、あの…特別室ですか?」
「はい、こちらのお部屋のキャンセルが出ましてね。他は満室となっております」
お寛ぎくださいと言って扉が閉められた
部屋を見渡す
前回とは違う調度品が飾られている
季節に合わせてしつらえを変えてある、これももてなしの現れだ