第14章 滴る
不死川にくってかかろうとした名前が頭を押さえつけられているのを横目に、俺はもう1人をみつめる。
こいつは、例のアプローチ野郎だろうか。
俺の心にまた黒い感情が広がっていく。
「…あなたが義勇くんですね、初めまして。俺は苗字ちゃんの仕事の知り合いで佐竹と申します」
ニコリ、と感じの良い笑顔の青年だ。
宇髄や不死川程ではないが、顔も整っている方だと思う。
「…冨岡義勇だ。キメツ学園の体育教師をしている。」
「…わー、そんな感じなんだぁ」
「そんな感じ…とは」
佐竹とやらが、悪意を込めた薄ら笑いをした。
「いやぁ、なんか、女の人がハマりそうなタイプの人ですね、義勇くんって。俺、結構前から苗字ちゃんのこと狙ってたんだけどなー、苗字ちゃんとはいつ出会ったんです?」
「ちょっと佐竹さん!義勇くんに根掘り葉掘り聞くのやめてください!困っちゃうでしょうが!」
「えー、苗字ちゃんが会って可愛さ認めさせるって言うからお話ししてただけだけど」
名前が俺と佐竹の間に立ちはだかった。
俺より身長が小さい為心許ない背中と両腕がとてもかわいい。
後ろから抱きしめたくなる衝動に駆られるが、きっとやったら名前に怒られるだろう。
………いや、この佐竹を遠ざけるために俺が名前の恋人という話になっているんだったな。
それなら、恋人らしいスキンシップをしても良いか。
「……名前」
「ひょわっ!」
両手を広げている名前を後ろから抱きしめ、耳元で名前を呼んでみた。
びくり、と名前が肩を跳ねさせ、耳は赤く染まった。
かわいい。かわいい。かわいい。
「……遅かったな?待ってたのに、俺以外の男と仲良く話してたのか?」
「わわわわわ義勇くん耳元で喋らないで恥ずかしいあとみんなめっちゃ見てる!!!」
「おもしろー」
「見てられねぇわァ」
そういえば宇髄と不死川がいたな。
存在を忘れていた。
気にせず、恋人らしい振る舞いを続ける。
「…見られて困るのか?恋人同士だろう」
「ひっ…恥ずかしいものは恥ずかしいし私の心臓が持ちません!」
「……かわいいな」
「ぐはっ」
「名前ちゃん死んだ」
「小っ恥ずかしいだよおめェは」