第13章 白露
「俺も触りたい」
「ぎ、義勇くんはもう私を散々触ったでしょ…その仕返しをしてたのに…」
「もっと触りたくなった」
そう言って私に許可も取らずに耳に触れてきた。
私がやったみたいに指先で耳のふちをツー…となぞってきたので、少しだけぞくりとした。
「んっ…ちょっと」
「仕返しだ」
「私がしてたのに!」
「なら、名前ももっとやり返せばいい」
ほら、と義勇くんは私の手をとって自分の耳にもってきた。
触れと、そういうことなのだろう。
なんだかすごくいかがわしい!!
……というか、え?まって?
「義勇くん…耳触ってる時、起きてたの?」
「あ…」
あ…って
おい
耳なんて1番最初に触ったんだけど。
最初から起きてたってことじゃん。
「起きてたんなら!言ってよ!!」
「いっ…」
思いっきり耳を引っ張ってやった。
どーだ。
「ひどいぞ」
義勇くんがかるーく睨んできたけど、負けない。
「なんで起きてること言わなかったの」
「…俺が起きてるとわかったら、触るのやめただろう」
「当たり前です」
「…だからだ」
ぐぬぬぬぬ
可愛いこといいやがってー!!!
「私恥ずかしいんですけど…」
「なぜだ」
なぜって…逆になぜ?
寝てると思ってた人に好き勝手したらほんとは起きてたなんて、誰でも恥ずかしいと思うんだが…
「この恨みはいつか必ず晴らします」
「怖いぞ」
義勇くんが悪い。
ふんっと顔を背けたら、テレビからお昼を知らせる時刻が流れた。
「そろそろ鮭大根作りますね」
「鮭大根…!」
打って変わっておめめが輝きました。
気が変わってくれてよかった。
また義勇くんの気が変わったらたまったもんじゃないので、
私はすぐに鮭大根作りにとりかかった。
義勇くんに理想の鮭大根を教えてもらい、彼の理想になるべく近づくようにした。
そしてなんとか出来上がった。
「お味はどう?」
「……」もぐもぐ
食べてる時に話せない義勇くんが、言葉の代わりに表情で教えてくれました。
とてもお気に召したみたい。
彼の好物を美味しく作れたことにほっと胸を撫で下ろす。
「うまい」
飲み込んだ後、微笑んでそういってくれた彼にとても気持ちが暖かくなった。
義勇くんはあっという間に完食した。
私の作った鮭大根が、推しの血となり肉となる…感激だ。