第13章 白露
食器を片付けてお皿洗いを済ませ、自分の荷物をまとめていると
「もう、帰るのか」
とこれまた子犬のような瞳で義勇くんが聞いてきた。
やめなさいよその顔。後ろ髪引かれちゃうでしょうが。
「はい、長居しちゃってすいませんでした。」
「全然長くない」
「昨晩からだから結構長いですよ」
「……長くない」
こどもか
寂しいオーラが滲み出てる。
「また来ます。連絡先も交換できたんで、今後は気軽に会えますね」
「…会ってくれるのか」
「もちろん!私からも声かけますね、次は一緒にお出かけしましょ!」
「…楽しみだ」
甘えん坊が納得してくれたようなので、玄関へ行き靴を履く。
ちなみに借りていた義勇くんのスウェットは脱いで、元々着ていた自分の服を着た。
スウェットは洗って返すつもりだったが、なぜか義勇くんが頑なに拒否してきて押しに負けたので、そのまま返却することになった。
扉を開け、外に出る。
義勇くんが近くの駅まで送ると言ってくれたので、お言葉に甘えた。
「改めて、ありがとうございました。」
「気にするな」
「いやぁ、気にしちゃいますよ。結局、お詫びらしいお詫びもできなかったし」
「お詫びは貰ったぞ」
「手作りの鮭大根じゃ、お詫びにならないよ。材料も義勇くんが用意したものだったし…」
「それだけじゃない」
「え?」
義勇くんはピタリと足を止めて、視線を私の顔からつま先までゆっくり移動させ、じっ…と見つめた。
あまりの艶っぽい視線に、むずむずする。
「鮭大根以外も、いろいろと堪能させてもらったが」
「っ……えっち…」
「なっ」
なっ、じゃないよ。
なに顔赤くしてんの。
その顔するのこっちなんだわ。
ほんとにこの人は心臓に悪い。
再び歩き始め、すぐに駅に着いた。
「じゃあ、また」
「あぁ…無事着いたら、連絡をくれ」
義勇くんの優しさに、自然と顔が綻ぶ。
「はい!」
義勇くんは、私の姿が見えなくなるまで、ずっと私を見ていた。