第13章 白露
「………今日も良い匂いがする…」
「ひぁっ…っ!!」
首筋に義勇くんの吐息と唇が掠めて、思わず変な声が出てしまった。
義勇くんが驚いた顔をしてこっちを見ている…
「〜っ……義勇くんのあほっ…!」
「す、すまないっ…」
あまりの恥ずかしさに涙目になる。
顔が熱い。
私は両手で自分の顔を覆った。
さすがの義勇くんもまずいと思ったのか、体を起こして私から離れた。
この甘えん坊気質の末っ子が…!!
おぼえてろよ!!!!
「うぅ…変態野郎…」
「…反省している…」
「…セクハラだ…逮捕されてしまえ…」
「逮捕は勘弁願いたい…」
指の隙間からチラリと義勇くんをみれば、許してくれ…とまた子犬のような目でこちらを見ていた。
……その可愛さ、本当に狡いと思う。
というか、私はなんでこんなに義勇くんに甘いんだ…
とっくにブチギレてても不思議じゃないことされてるのに。
推しってすごい。
「……もう二度と抱きしめません」
「…そんなっ……」
絶望とはまさにこの顔だ。
そんな顔するならあんな真似しないでほしい。
なんで許されると思ったんだよ。
「…すまない。もうしないから…抱きしめるのはまたしてほしい…」
「…なんであんなことしたの」
「……名前の柔らかさと匂いを堪能したかった…」
ほんとに変態じゃん。
てか柔らかいの好きすぎだろ。
「…今度スクイーズあげるね」
「…?…ありがとう」
私は顔から手を離し、ソファから立つ。
「…どこにいく」
義勇くんが不安そうな瞳で見上げてきた。
私が本気で怒って出ていこうとしていると思ったのだろう。
結局、私はこれに弱いのだ。
私がいなきゃ寂しくて死んでしまうとでも言いたげなこの瞳に。
「…お手洗い貸してください」
「そこのドアを出て左だ」
「はーい」
リビングを出てトイレに入り、私は頭を抱えた。