第1章 水月
昨日の夜中から雪が降っていた。
朝も降っていたが、思ったより積もっていなかった為、いつも通り自転車で通勤した。
これが間違いだった。
一応、地面を注意していたつもりだった。
ただ、門前にいる竹刀先生を見つけてしまったものだから、
そして昨日一昨日の撲滅運動は竹刀先生じゃなかったから余計に舞い上がってしまって、この学校前の道が日陰であることを忘れてたの。
そして竹刀先生に挨拶しようとスピードを緩めた瞬間、
「おはようございまー...すっ....?!」
「?!」
浮いた。
体が、宙に。
凍った路面にタイヤを滑らせて、自転車ごと、漫画のようにツルンッて滑って浮いた。
それはもう、現実でこんな浮くことある?ってくらい浮いた。
体感だけども。
彫刻の如く動かなかった竹刀先生の表情が、初めて変わった。
すごく焦った顔。
わー焦った顔も整ってるーーーすてきーーー
さすが推しーーーー
てかドラマでよくある事故とかのシーンで、主人公がスローモーションになるやつって現実でもなるんだーーー
おやぁ?竹刀先生、竹刀投げ捨ててなんか走ってきてるーーー
なんてどこか他人事のように考えていたら
どすんっと体に衝撃が走った。
思ったより痛くない。
というか全然痛くない。
そして目の前には、眉間に皺を寄せ、めずらしく息が上がってる私の推しの顔。
え、なにがおこった??