第9章 飛沫
「よもや!あなたとこのような場でご一緒するとはな!」
天元さんのもうひとつの隣の席に、あの炎みたいな人がいた。
相変わらずのでかい声で話しかけてくれた。
「ちゃんとお話しするのは初めてですね、苗字名前です。よろしくお願いします」
「うむ!俺は煉獄杏寿郎だ!今日は楽しむと良い!」
「ありがとうございます!」
気持ちの良い喋り方をする人だなぁ
なんだか義勇くんと対照的だ
義勇くんをみると
鮭大根を食べ終え、静かにお酒を飲んでいた
何飲んでるんだろう…
「そういえば名前ちゃん、今朝言ってたアプローチがしつこい男はどうだったんだよ?」
ガシャンッ
「わっ?!」
天元さんに話しかけられたので前を向いたら、すかさず横で音がしたのでもう一度義勇くんを見ると、手を滑らせてグラスを倒してしまったようだった。
「大丈夫ですか?」
近くにあったおしぼりでテーブルを拭く。
服は濡れてないようで安心した。
「……アプローチとは…」
「あぁ、えっと…」
義勇くんが真剣な眼差しで聞いてきたので、今朝不死川さんと天元さんにした話をみんなに話した。
「随分と独り善がりな人がいるのねぇ、名前さんが心配だわ」
「胡蝶の言う通りだ!男たるもの、もっと紳士的であるべきだ!」
ひと通り話し終えた後、カナエさんと煉獄さんが私の味方をしてくれ、心が暖かくなった。
「でも今日はその人、なんかトラブルがあったとかで結局職場にはこなかったんです」
「そりゃよかったな」
「よくないですよ!!!!!」
「おわびっくりしたァ」
私は少なくなってきたサングリアのグラスをドン!とテーブルに勢いよく置いた。
「不死川さん!よくも今朝は私を見捨てましたね!」
「…どういうことかしら?」
「あー…いや、実はよー」
天元さんが、今朝私が不死川さんに彼氏のフリを頼み込んだことをみんなに説明し始めた。
その途中で
バキィッ
という音がしたので見てみると、義勇くんが今度は無表情で割り箸をへし折るほど握りしめていた。
「大丈夫ですか?怪我してない??」
「………問題ない」
ほんとか?力加減間違えちゃったのかな
「撮ったのか」
「へ?」
「写真は、撮ったのか」
な、なんか義勇くん、ドス黒いオーラでてない??