第9章 飛沫
反対側をみると、義勇くんはもくもくと食べていた。
「義勇くん、何食べてるんですか?」
「…!」もぐもぐ
「……」
「……」もぐもぐ
「…まだ口に残ってましたね、すみません」
食べてる最中に話しかけられ、困ったような顔で必死にもぐもぐする推しが見れたのでこの飲み会はもう最高です。
「……鮭大根だ、食べるか?」
ごくんと飲み込むと、義勇くんは使っていた箸で鮭を掴み、私に差し出してきた。
え、これは…え?
もしかして、あーんってやつしてくれてる???
「……」
推しのファンサにフリーズしていると、義勇くんが首をかしげ、
「嫌いだったか…?」
と聞いてきた。
違う、嫌いじゃない。
あまりの出来事に、今私の脳は停止しているのだ。
だって、推しが、あーんだよ???
しかも自分が使ってた箸で。
こんなん当たり前に無理。
爆発してしまう……!!!!
「冨岡ァ…自分が使ってた箸で人に食べさせようとするんじゃねェ、非常識だろぉがァ」
「っそうか、すまない」
あぁっ、義勇くんがしゅんっとしてしまった…
ごめんね、でもあれを受け入れたら私は確実に死んでた!!!
「こっちの取り皿に、分けてもらってもいいですか?」
「!…あぁ」
義勇くんは、私が差し出した取り皿に鮭大根をよそってくれた。
一口食べて、美味しいですねと言うと、とても可愛く微笑んでやはり私は一度死んだ。
そんな私を不死川さんが呆れたような目で見てたのには気づいていたけどそんなの構うもんか。
ふと前を見ると、カナエさんはニコニコしており、天元さんがなんか、なんとも言えない表情をしていた。
どういう気持ちの表情なのだろうか…
そうこうしているうちに、私のサングリアが運ばれてきたので、改めて乾杯しようということになった。
「じゃあ、名前ちゃんも来たことだしもっかい派手に乾杯するぜ!」
「お、お邪魔してますー!」
乾杯!とみんなでグラスを傾け合った。