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すいめいのひと

第5章 水鏡



「おっ、噂をすればじゃねぇか?」

「........」

まだ多少の距離はあるが、表情がわかる位置まで彼女がやってきた。
なぜか瞳を輝かせ、早歩きでこちらに向かってくる。

「なんだかうずうずした顔をしているわ」

「歩き方と表情で、もうすでにおもしれー女って感じするな」

目の前までやってきた。

「っおはようございますっ!!!!」

いつもより声が大きい。
瞳がキラキラとしていて少し頬が紅潮している。
とても愛らしい表情に胸がぎゅっとなる。

「...おは「派手におはようございます!!!!」

「おはようございます〜」

おい宇髄

「今日は、お一人じゃないんですねぇ」

彼女は宇髄と胡蝶をチラリと見た後、にへら、という効果音がつきそうな笑みで俺を見る。
俺は彼女がよくするこの笑顔が好きだ。


「どーも、冨岡の同僚の宇髄です」

「同じく胡蝶と申します」

「あ、苗字です!どうもどうもー」

さすが宇髄だ。
俺がずっと聞きたくても聞けなかった彼女の名前をいとも簡単に聞き出した...。

「っていうか、冨岡さんっていうんですね!」

彼女は俺の方に向き直り、そういえばお名前聞いてませんでした、とはにかむ。
彼女の口から己の名前が聞けるとは...苗字だとしても感無量だ。

「はぁ?お前名乗ってなかったの?」

「...タイミングがなかった」

「そんなことある?」

あるのだ。

「彼、冨岡義勇くんっていうんですよー」

「わぁっ、かっこいい名前ですね!」


ぎゆうさん、

と彼女は俺の好きな笑顔で俺の下の名を呼んだ。

心臓が痛いほど高鳴った。
こればかりは胡蝶に感謝せざるを得ない。
しかもかっこいいと言われた。
かっこいいと。

「おねーさんの下のお名前は?」

「名前といいますっ」

そして宇髄も二度目のファインプレーだ。
最初は彼女との時間を邪魔しないでくれと思っていたのに、今では感謝でいっぱいだ。

「名前...」

「ほげっ?!」

心の中で彼女の名を呟いたつもりが、無意識に口にでていたようで、彼女が飛び上がるように驚いた。
その姿が小動物のようで愛らしい。

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