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クズでごめん、

第1章 LazyGirl


水の流れる音。
洗われた灰皿がカチャンとシンクの脇に置かれる音。

自分の家みたいに慣れた手つきで片付けを済ませて、
洗われた灰皿を持って戻ってきた彼は、ソファに座る私の隣に腰を下ろした。
 
ほんのり残る、アイスの甘い匂いと、彼の香水。
 
「……次からはちゃんと『アイスクリーム』買ってくる」
 
彼はそう言った。次もあるらしい。
肩がぶつかる距離。私の顔を覗き込んでくる。
 
その目が真っ直ぐ過ぎた。
私は視線をテーブルのタバコの箱に逃がす他なかった。
そこから一本だけ取り出す。
 
彼は大きくため息をついた。
私が、次の話をしたがらない、と受け取ったのだろう。
 
「とりあえず、一服する」
彼は私が吸おうとして咥えた、火のついてないタバコを一本取り上げて
自分の口元に運び、当たり前みたいに私のジッポを使ってそれに火をつけた。
 
「あんた電子タバコでしょ」
「あるから、貰うだけ」
「貰うじゃなくて奪うって言うんだけどその行動」
「……だる」
「言っといてなんだけど、確かに今のはダルいわ」
 
話すこともなく、タバコの煙を眺めているだけ。
 
最近どう? なんか変わったことでもあった?
なんで振っておいてうちに来るの? 毎回毎回終電逃しすぎ?
なんて会話をするでもなく、だらーっとしている。
 
とりあえず、スマホで明日の天気を調べてみたりした。
晴れ。晴れることはいいことだ、確認おしまい。


横を見ると彼は何をするでもなく、
スマホを見ることもなく、ぼーっとタバコを吹かしていた。
 
「何してんの?」
私の視線に気付いたのか、彼は私のスマホを覗き込んでそう聞いた。
 
「明日の天気、晴れ」
「そっか。予定でもあんの?」
「仕事。でも休日出勤だから遅く出る」
「相変わらず社畜してんな。俺は休み」
「相変わらずホワイトしてるね」
「お前と違って俺、仕事嫌いだから」
 
吸い終わったタバコの火を消す。
洗ったばかりの灰皿を汚すのは気分がいい。
 
「明日仕事ならもう寝る?」
タバコの灰を落としながら彼はそう私に聞いた。
 
私がタバコを吸い終わったのに対して、
彼のタバコはまだ火がついたまま。
 
あまり観察眼に自信はないものの、
煙を肺に送るというよりかは、
タバコ自体の匂いに包まれたがってるようだった。
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