第2章 my LazyGirl
「あ、起きた? テーブルに鍵置いとくから、
出るとき勝手に閉めてポスト入れといて」
鏡の前で身支度をしながら、あいつは振り返りもせずに淡々と言う。
ダメだ。全然効いてない。
あいつの頭の中には、もう昨夜の俺なんて残っていない。
今日という新しい一日と、
俺以外の男が入ってくるかもしれない未来のことしかない。
「……なぁ」
「なに?」
「煙草、一箱持ってっていい?」
自分でも引くくらい情けない声。
あいつは呆れたように振り返ると、
テーブルの上の紙巻きタバコの箱を、
ベッドの上の俺に向かって投げつけてきた。
「昨日タバコ切れてたの?
あげるよ。次来るときは自分の電子タバコ吸いなよ」
そう言ってバッグを抱えて部屋を出ていくあいつの背中を見送りながら、
俺は投げつけられた箱から一本抜き取った。
ベッドのサイドテーブルの引き出し。
その中にはタバコのストックが数個、
俺が付き合ってるときから置きっぱなしにしてるゴムの箱。
その隣に彼女がたまに使ってるジッポが並んでいる。
そのジッポを鳴らし、火をつける。
苦い紫煙が喉を焼く。
『なんか違う』なんて言って振ったのは、俺の方だったはずなのに。
煙を吐き出しながら、俺はあいつの匂いを纏ったまま。
いっそ俺の存在ごと、引き出しの奥にでも仕舞ってほしい。
そんな弱いことは、絶対に言えない。
だから、俺はまた、終電を逃して、アイスを持ってここに来る。