【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第1章 赤いシャツ ※裏 イルミ×使用人
「これ、邪魔だから脱いでよ」
イルミの声は淡々とし、ほとんど感情を含んでいない。
それでも、低く落とされる息はわずかな熱を帯びている。
シーツに扇状に広がる長い髪の中、普段は見せない艶めいた表情の主人をナレッタは見下ろす。
スラックスの腰のラインの縁にわずかに差し込まれる白い指により、ナレッタの心臓は不規則に跳ねる。
「はぁっ……」
吐息が漏れる。
わざとらしく弱々しく。それでも熱が溢れてきて堪らないと言わんばかりに。
「早く入れて欲しいでしょ」
わずかに上半身を起こそうとしたイルミへ、ナレッタは咄嗟に抱きつく。
ナレッタ自身の髪がさらりと落ちて視界を狭める。その甘い香りの奥から、イルミの体温がわずかに触れ、その熱には殺しを重ねた男特有の、鉄錆を帯びた死の気配が潜んでいた。
ナレッタの内臓が、その匂いを味わうように熱く疼く。
(そんなことしてたら…っ)
着脱の後、またこの位置を取れる保証はない。仕掛けるなら、圧倒的に上からのほうが有利だ。
それに、上着の内ポケットのナイフに気づかれれば、もう勝ち目はない。ナレッタは腕を伸ばしてまたイルミと距離を取る。ナレッタは一か八か、賭けることにした。
しおらしくイルミから目を逸らしながら、ナイフの当たる硬い感触で位置を確かめる。
「は、恥ずかしいので……脱がせてもらえませんか。イルミ様に……お願いします」
「別にいいけど」
「それと……もし良かったら、目も閉じてもらえると助かります」
「お前、図々しいね。ま、いいよ」