【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
「何?」
平然と聞いたつもりなのに、少しだけ声が固くなる。
「別に」
イルミはそう言ったまま、離れなかった。
「……近いん、だけど」
イルミは鎖骨の窪みあたりに顔を埋めてくる。
「俺、おねーさんに会えてよかった」
さっきより低い声に、胸が小さく高鳴る。
「……?」
「今まで、どれだけ痛めつけられても、どこかで訓練だからって納得してたんだよね。そのことで父さんにはいつも、ヤル気ないのかって怒られてたけど」
「んー?」
「でも、今回は違った。父さんが無理やりしてきた時、初めてぶっ殺したいって思った」
「はー」
話しながら、イルミの指が肩からゆっくりと腕の内側へ移っていく。
力は入れずただ撫でるように肌の上を這う感触が、じわじわと熱を残す。
胸のざわつきを抱えたまま、イルミが何を言おうとしているのか、じっと耳を澄ませる。
「その時、俺、ちょっと嬉しかった。俺もやっぱり父さんの子どもなんだなって」
「はぁ」
「おかげで、暗殺者として目覚めたっていうか」
イルミの複雑すぎる心境には、「わかるわかる」とは言えなかった。
でも、まったくわからないわけでもない。
「大人になったってことかな」
「そんな感じかな」
「多分。あたしも、ぶっ殺したいって気持ちあったよ。店長にキスされた時とか」
「へえ」
また同じ返事に、なんだか可笑しくなって笑うと、イルミも僅かに口元を緩めた。
その笑みのまま、指が肘を越えて、掌を上向きにしたあたしの手のひらに触れる。指と指が絡むようにゆっくりと重ねられていく。
さっきまであんなに落ち着かなかった鼓動が、今は不思議と心地いい。
髪を触って、指先が触れて、肩がぶつかって。
そして今は手を合わせて、熱を預け合っている。
くだらないことを喋りながら、いつの間にか離れていた距離がなくなっていた。
イルミの膝があたしの腿に軽く乗っていることにも、気づいたのはかなりあとだった。