【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
あたしはとにかく自分のペースを取り戻すように、イルミの髪へ手を伸ばした。
「ねえ、思ってたんだけど、サラサラだよね」
「え? 髪のこと?」
「うん。天使の輪できてるよ」
指で一房すくって、そのままさらさらと梳いてみる。見た目どおり、引っかかりひとつない。
「はは。俺が天使になんて見える?」
「髪だけなら天使」
「髪だけなんだ」
適当に振った話題だったけれど、イルミが素直に乗ってきてくれて、内心ほっとする。
下着から手が離れて、ふっと空気が緩んだ。
イルミは真似をするように、あたしの髪を一房つまむ。
指先が耳の後ろを掠め、わずかに首筋に触れたその一瞬の熱が、妙に残った。
「ていうか、おねーさんもサラサラじゃん」
「あたしは縮毛かけてるし……イルミとは違うよ。天然じゃない」
「どっちでも同じじゃない?」
「それが違うんだなー」
「へえ」
興味があるんだかないんだか分からない返事をしながら、イルミの指が毛先を弄ぶ。
そのまま、ゆっくりと指を滑らせて後頭部に回してくる。
頭皮を軽く撫でるような動きがくすぐったくて、背筋に薄い電流が走ったように、肩が小さく震えてしまう。
肩にイルミの視線が落ちたのが分かった。
けれど、それには気づかないふりをして、あたしは今度は前髪を摘んで横へ流してみる。
「こうするとちょっと雰囲気変わるね」
「そう?」
「うん。ちょっと大人っぽい」
「元から大人っぽいでしょ」
「んー。時々は、ね」
綺麗な額の下で、大きな黒い瞳がわずかに細まった。
「子ども扱いやめてよ」
「はいはい」
その目を見続けていられなくて、あたしは笑いながら額を軽く小突く。
イルミは避けもせず、それどころか押し返すあたしの指をものともせず顔を寄せてくる。
さっきまで髪に触れていた手が、いつの間にか肩へ滑り落ちていた。