【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
どれだけ酷い目に遭わされても、それが自分のためだと疑ってない。
父親が自分を見て、間違えれば正し、耐えれば認めてくれる。
なんだかなぁ。
この親子、愛情はちゃんとあるんだよ。
あるんだけど、あたしの知ってる愛情とはだいぶ形が違う。
……いや。
あたし、愛情なんて知ってたっけ。
誰かに間違いを正してもらったことも。自分のために本気で怒ってもらったことも。こんなふうにちゃんと見てもらったこともない。
だからこれが正しい愛情なのかなんて、あたしには分からない。
だけど……だからかな。
父親が自分のためにここまでしてくれていること。
こんなにきつい訓練をしてまで、間違いを正そうとしてくれたこと。
イルミは今、それをひとつひとつ確かめるみたいに、ぎゅっと噛み締めている。
それを見ていたら、なんだかあたしまで潤んできてしまった。
(……やだなぁ)
こんな親子見て、泣きそうになるなんて。
「お前が道を誤りかけたなら、正すのは俺の役目だ。今回のことも、お前が暗殺者として生きていくために必要な訓練だった」
「……」
「俺の言いたいことは、もう分かったな」
イルミは俯いた。
「……うん」
小さな返事だった。
だけど、何故だろう。
素直に頷いたようには、見えなかった。
父親の言っていることは分かっている。
自分のためにここまでしたことも、きっと分かっている。
それでも何かひとつだけ飲み込まずに、胸の奥へ残している。
そんな顔だった。
シルバはそんな息子をしばらく見下ろしてから、僅かに声を和らげた。
「もうこの訓練は終わりだ。明日からは通常通りの訓練に戻る」
「分かった」
シルバは満足そうに頷いた。
どうやら親子間では無事に話がまとまったらしい。絆も深まったようで何よりだ。
よかった、よかった。
これにて一件落着。
――と思ったところで、シルバは何か名案を思いついたような顔であたしを見た。
「ということで、もう被験体は不要だ」
「ん?」
そして、ごく当たり前のことのようにイルミへ告げる。
「始末しろ」
「……」
……ああ。
短い人生だったなぁ。