【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
……んなことある訳ないよねー。
腐りかけの女と麗しの美少年の恋が――つーかイルミ、あたしに恋してんのか?――成就するなんてそんな夢みたいな話、たとえ夢小説でも無理だっちゅーの。
「おい、女」
「はいはい」
非道なオッサン――もとい、シルバがあたしを呼ぶ。
「教育係として、最後まで責任持って教えてやれ」
「はーい」
今日はイルミが手枷も足枷も使っているから、あたしは久しぶりに自由の身だ。
あたしはイルミの前まで歩いていき、その傷だらけの頬にそっと手を当てた。
「イルミ」
虚ろな瞳が、ゆっくりとあたしを映す。
「君はね……あたしのことが好きなんじゃないの。それね――」
できる限り、あっけらかんと言ってやる。
「性欲っていうの」
「違う。俺は、おねーさんが……」
掠れた声を振り絞るイルミの唇に、あたしは人差し指を当てた。
「イルミはお利口だよね」
「……」
「だったら、そんな大事な感情をあたしなんかに使っちゃ勿体ないよ。本当に大切な人が、いつかちゃんと現れるから」
頬を撫でて、笑ってみせる。
「いい? その時まで、大事に取っておきなさい」
「……」
イルミは何も言わなかった。
ただ、あたしを見ていた。
納得したのかしていないのか。
その黒い瞳からはもう何も読み取れない。
その代わりに、シルバがここぞとばかりに深く頷く。
万が一にも、あたしと愛息子が一緒になられては困るらしい。
「イルミ」
シルバの低い声が落ちる。
「今日はかなりきつい訓練だったな」
「うん」
「よく耐えた」
俯いていたイルミの瞳が、僅かに揺れた。
それだけで分かる。
ああ、この子。
嬉しいんだ。