【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
「……胸の中」
イルミはそこへ視線を落とした。
「そ。誰にも言わない。イルミだけが知ってればいいの」
「ふーん……」
分かったのか分かっていないのか。
イルミはしばらく自分の胸元を眺めていたが、やがていつもの平坦な顔に戻った。
「じゃあ、訓練行ってくる」
「はいよ。頑張ってらっしゃい」
イルミは扉へ向かい、途中で一度だけ足を止めた。
「……おねーさん」
「ん?」
「俺、もうちょっと考えてみる」
何を、とは言わなかった。
重たい扉が閉まっていく。
――そして、一晩中考えたらしい。
あたしの予想を遥かに超えて、ものすごく真面目に。
その結果。
イルミはどうやら、自分の中に生まれた『変な気持ち』に、『好き』という名前をつけた。
そこまではまあいい。
問題はその後だ。
あいつはその足で一直線にシルバのところへ行き、『俺、被験体のおねーさんのこと好きみたい』と、のたまったらしい。
なんで言った。
胸の中にしまっとけって言っただろうが……。
あたしはつくづく意地悪だ。
しまえと言われれば、かえって溢れてしまう。
そんなこと、半ば分かっていてあえて言ったのだから。
こんな性格だから、こんな底辺まで落ちたんだろうなぁ。きっと。
でもさ。
地獄には、地獄なりの楽しみ方ってあるじゃん?
――あたし、見つけちゃった!
翌日。
あたしの隣では、イルミが感情のコントロールを失敗した罰として、いつもの何倍も厳しい訓練を受けていた。
毒を飲まされ、鞭で打たれ。
とうとうイルミは血反吐が上手く吐き出せなくなって、ひくひく咽せ返るように咳き込んでいる。それでも一向に訓練は終わらない。
何時間も続くそれに耐える姿は痛ましく、さすがのあたしも可哀想になってくる。
(イルミ……可哀想……)
……可愛い。
可愛い。愛おしい。
だって、あたしのために。
あたしを好きになったばっかりに、こんな目に遭って、それでも必死に耐えてるんだよ?
……ん?
待てよ。
イルミが、あたしのことを好き。
そして、あたしもイルミが好き。
ってことは――
両思いじゃん!!
え? まさか!!
このままあたしとイルミは結ばれて、ゆくゆくはあたしがゾルディック家に嫁いじゃったりして。
ここから――まさかの、ロマンティックなシンデレラストーリーが始まっちゃう感じ……?!
