【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
あたしは彼の腿を優しく押さえ、逃がさない。代わりにもっと丁寧に、もっと優しく、吸い続ける。唇で包み、舌で愛し、指先で先端をくるくると撫でては、時折見上げて彼の表情を確かめる。
イルミの白い頬に薄い紅が差している。
髪が額に張り付き、息が荒くなっていく。
あの冷静な暗殺者が、こんなにも素直に体を預けて、あたしの口の中で震えている。
「いいよ。もっと感じて」
イルミの身体からゆっくり力が抜けていき、後ろに倒れかけるように寝そべっていくとき、ふと脇腹の染みが目に入った。固まった血液が黒くなっている。
あたしはそこにも手を当てると、そっと撫でた。
「痛かったねぇ。痛いの痛いの飛んでいけー」
「別にっ……いつものことって言っただろ」
それでも、彼はあたしの手を払いのけなかった。むしろ、わずかに身を預け直すようにして、その感触を受け止めている。
「あたしにまで痩せ我慢なんかしなくて良いのに」
そう言って、さらにイルミに重なるように身体をずらした。わざと、ちょっとだけネイルの先で傷口の辺りを軽く引っ掻いてやる。
「ッ…!」
「こういうのも好き?」
「……っ、あのさ………」
イルミがキュッと目尻を細めて、あたしの上に被さろうとする。
「イッ…………。はあっ…」
でも、力は入っていない。むしろ、その仕草ごとあたしに預けてくるみたいだった。
あたしの足の鎖の音が、静かな部屋に小さく響いた。
「いいよ。イルミは動かなくて」
「……性格悪っ。俺に勝った気でいるの」
「全然。初めから相手にしてないもん」
「…………」
イルミはジトっと睨んでくる。
でも、その視線にはもう、鋭さは残っていなかった。
代わりに、どこか困ったような、甘えたような色が混じっている。
あたしはにっこり笑いながら、囁くように言葉を吐き、再び深く咥え直す。
「いっぱいいっぱい、気持ち良くなろうね」
「……っ」
イルミは目を細めたまま、コクっと息を飲み込んだ。
そして、ほんのわずかに――自分から手を伸ばして、腰の位置にあるあたしの髪に触れた。
その小さな仕草に、あたしの胸が、優しく熱くなった。