• テキストサイズ

【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常

第1章 赤いシャツ ※裏 イルミ×使用人


しかし、それは長くは続かなかった。
イルミのシャツが、汚れなくなったのである。任務が減ったわけではない。むしろ増えていたのに。


イルミは幼い頃、訓練でよく怪我をしていた。剣術。体術。毒や電気への耐性訓練。
白いシャツには、毎日のようにイルミ自身の血が滲んでいた。


やがて、成長したイルミは怪我をしなくなった。訓練では扱かれるより弟たちを扱く側に回り、任務では傷を負って帰ることがほとんどなくなっていた。
洗濯籠に入るシャツは、いつも真新しい白さのままだ。


「イルミ様、最近は怪我をなさらないんですね」

ある日、洗濯場で何気なく口にすると、年嵩の使用人が笑った。

「当然だろ。一流ほど、自分の血を流さない」

なるほど、とナレッタは頷いた。


そして、その夜は眠れなかった。
胸の奥が空っぽだった。
血の匂いが足りない。
あの鉄の香りがないだけで、呼吸まで浅くなる。

弟のキルアでもカルトでも。
他の家族でも違う。
理由は分からない。
イルミの血染めのシャツだけがナレッタの胸の空洞を満たした。


ある日、イルミが任務で何かしでかして拷問部屋へ向かったという話を耳にした。
その瞬間、ナレッタの足は無意識に洗濯場へ向かっていた。

その日のシャツは、久しぶりに赤く染まっていた。
桶へ沈め赤が広がる。
鉄の匂いが鼻腔を満たす。

「ああ……」

思わず笑みがこぼれた。

周囲に誰もいないことを確認し、ナレッタは静かにシャツを湯から持ち上げ息を吸い込む。

これだ。これだけでいい。
このためだけに、今日まで屋敷にいる。
そんな自分に気付いた時、ナレッタは初めて思った。

――シャツが汚れないのなら。

その考えはナレッタにとってあまりにも自然で、あまりにも合理的だった。
だから、迷いはなかった。


イルミの血が欲しい。
そのためには、イルミを刺すしかない。だが、真正面から挑んでも一秒ともたない。

暗殺者と使用人。
力量の差は理解していた。

では、どうする――ナレッタは静かに考える。

眠らせるか。
毒を盛るか。
背後から襲うか。
どれも成功する気がしなかった。
そもそもイルミに薬や毒は効かないだろう。それに人の気配に敏く息遣い一つで振り返る。

ならば――。
一番自然に近づける状況を作ればいい。

ナレッタはイルミが男であることを利用することにした。

/ 46ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp