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【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常

第1章 赤いシャツ ※裏 イルミ×使用人


ナレッタはゾルディック家の使用人だ。

今日もイルミの部屋を掃除し、籠の中に畳まれた洗い立てのシャツを、一枚ずつクローゼットへ仕舞っていく。

部屋の主人であるイルミは仕事で屋敷を空けていた。

生活感のない整然とした室内は、清潔そのものだった。
それが、ナレッタには物足りなかった。



ナレッタは十歳で屋敷へ来て以来、使用人として働いている。
一番下っ端だった頃は、雑用ばかり任されていた。
中でも嫌われ役だったのが、血に染まったシャツの下洗いである。

任務から戻った暗殺者たちは、何事もなかったように着替えを洗濯場へ放り込む。任務だけではなく、訓練後も同様だ。

白いシャツには、乾き始めた赤黒い血。袖口まで飛び散った返り血。
時には、人の手形まで残っていた。

ナレッタは桶へ湯を張り、漂白剤を混ぜる。
そこへシャツを沈めると、白かった湯がゆっくりと桃色へ変わり、やがて濃い赤へ染まっていく。
鉄の匂いがナレッタの鼻を満たした。

最初は気持ち悪かった。
吐きそうになったこともある。
毎日洗い続けるうちに、その匂いは鼻の奥に残って消えなくなる。

気付けば、深く息を吸い込んでいた。
今日も、明日も。誰よりも丁寧に血を洗い落としていた。
理由は自分でもよく分からない。
ただ、その匂いを嗅ぐと胸の奥が静かに満たされた。

だからナレッタは、他の仕事を任されるようになってからも、自ら進んで洗濯場へ立った。
誰もやりたがらない仕事だった。
だから、誰にも止められなかった。
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