【H×H 短編集 ✴︎ R18】狂気の先にある日常
第2章 被験体 ※裏 シルバ×イルミ×教育係
あたしはイルミの背をそっと包んで、腰をゆるく動かした。イルミがぎゅっと固く目を瞑ってから、瞼を薄く開く。
伏せられた睫毛の隙間から覗く黒い瞳と、あたしの目が合う。
「……父さん。俺」
「どうした、イルミ」
「いや、なんでもない」
「誤魔化すな」
「んーとね……俺。さっきまで本当に気持ち悪いと思ってたのに、今は気持ちいいと思ってて、ごめん何言ってるんだろう。ちょっと混乱して……なんだろうな――」
イルミの顔がどんどん刹那気になっていく。
「――そんな自分が気持ち悪いんだよね?」
「え!? よくわかったね」
彼が、初めてちゃんとあたしの目を見た。ほんの一瞬、その黒い瞳から、それまで張りついていた冷たさが抜ける。
「そりゃ。あたしはイルミよりお姉さんだもん」
イルミの瞳ががわずかに輪郭を増す。自分の状態を言い当てたあたしを、不思議そうに見つめていた。
あれ、もしかして尊敬しちゃった?
別に大したこと言ってないんだけどね。
あたしはにっこり微笑んで、形のいいイルミの頭をそっと自分の方へと寄せる。そのまま唇を奪われても、イルミは抵抗しない。
キスには、ほんのりと苦味と酸っぱさが、まだのこっていた。
「いいか。だからいつも言っているだろう。感情なんてものに大した意味はない。一瞬で移ろう、酷く頼りないものだ。信用するな」
「うーん。なんとなくわかった」
「よく考えてみろ。ほんの少し前まで、お前は被験体のことを虫ケラのような目で見ていた。だが、今はどうだ?」
「……どうって」
「わからないなら、被験体に教えてもらえ」
「え?」
「おい」
イルミの唇を何度も味わってたあたしに、シルバの冷たい視線が落ちる。
「頼んだぞ」
「ういっす」