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愛しのサプフィール

第2章 嫁入り


やってしまった。大失態だ。そんな言葉を頭の中で反芻させながら、サプフィールは寝間着の裾を握り締めた。
これからどうすればいいのか。室内の一角でうろうろと歩き回る。
とにかくまずは着替えてスヴェトザールに朝の挨拶をしよう。その時に昨夜のことを謝らないと。
サプフィールは朝の支度をするために人を呼ぼうと呼び出し用の紐を探したが、見当たらなかった。
ベッドサイドにハンドベルを見つけ、それを鳴らす。
「……」
すぐに部屋の扉がノックされた。
「入って」
室内に侍女が入ってくる。サプフィールが実家から連れてきた侍女だった。それを見てほっと胸を撫で下ろす。
「サプフィール様、おはようございます」
「おはよう。ソーニャでよかった……」
「あなたの侍女ですもの」
ソーニャの手には実家で使っていた朝の支度をするための道具があった。
洗面器具やブラシを置き、ソーニャは部屋の分厚いカーテンを開けていく。
外の明るさが室内を照らす。サプフィールは眩しさに目を眩ませながらベッドの縁に座った。
「湯を持ってまいりますのでお待ちください」
洗面用のぬるま湯を準備しに侍女がまた部屋を出ていく。
全然知らない場所ではあるものの、見慣れた侍女1人いるだけでかなり気が楽になった。
サプフィールは変に乱れていない髪や寝間着に溜め息を吐きながら、昨夜のことを思い返した。
初夜のためにスヴェトザールの部屋を訪問したのに、むざむざ眠りこけてしまった自分に嫌気が差す。
ソーニャが運んできたお湯で顔を洗い、寝間着から室内着に着替え、鏡台に座って髪を梳かれている間サプフィールの表情はずっと暗かった。
「ソーニャ……」
「はい。何でしょう」
サプフィールの髪を結いながら、ソーニャが鏡越しに目を合わせる。
「わ、私……失敗しちゃった。夫人としての最初の仕事だったのに……」
主人に合わせる顔がない。
サプフィールは己への情けなさから、長い付き合いの侍女の目すらまっすぐに見つめ返すことができなかった。
「昨日の夜スヴェトザール様の寝室に行って、迎え入れてもらえたのに……何も始まらないうちから眠ってしまって……」
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