第5章 再婚の提案
しかしベッドの中には既に小さな膨らみがあった。入室に気が付いてこちらを窺うような様子はない。
できるだけ音を立てないようにベッドに近寄り覗き込むと、幼い息子が静かに寝息を立てているのが見えた。
「…………」
間に合ってなかった。
スヴェトザールは息を吐いて、せめてとばかりに優しくキルトの上掛けをかけ直す。
そのとき、トレーネスが傍らに何かを抱いているのが見えた。四角い。ぬいぐるみではなさそうだ。
そっと腕の中から抜き取ってみると、かなり大きめの本だった。ランプに近付けてみると、植物図鑑の表紙が照らし出される。
サプフィールの蔵書だ。乳母が妻の部屋から選び出したうちの一冊だろう。
子供が扱うにはやや重すぎる気がするが、トレーネスが読みたがったのなら仕方がない。
少し古びた図鑑の表紙を一撫でし、スヴェトザールはサイドテーブルに移した。
ベッドサイドのランプの灯を消す直前、もう一度トレーネスに目を向ける。
穏やかに眠っている。
スヴェトザールはそのまま灯りを落とし、足音を忍ばせながら静かに退室した。