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愛しのサプフィール

第2章 嫁入り


サプフィールが少し不思議そうにその様子を見ていた。
「ええ。些細なことで使用人を呼びつけるのがあまり好きではないので」
「……そうなんですね」
スヴェトザールの言葉に、サプフィールが視線を落とす。
もじもじと、落ち着かない様子で自身の手を触っていた。
「貴方はいつでも好きなように使用人を呼びなさい」
「あ、はい……」
暖炉に置いたケトルの中で沸々と湯が音を立て始めた。
それを取り、スヴェトザールはポットとカップに熱湯を入れてケトルをまた暖炉に戻す。
「すみません。お手間を取らせてしまって」
「気にすることはありません。楽にしていなさい」
茶器が温まるまでの間、サプフィールはやはり肩身が狭そうに座っていた。
部屋は静かだった。薪の爆ぜる小さな音と、ケトルの中身が沸騰している音ばかりが響いている。
スヴェトザールは黙ってサプフィールを見ていた。
サプフィールもまた口を噤んでいたが、その目はずっと泳ぎ続けている。
ティーカップ、カーテン、暖炉、ベッド、スヴェトザール……おろおろと視線はあちこちに散っていた。
茶器が十分に温まった頃、スヴェトザールは温めるのに使った湯を捨て、茶葉の缶を手に取った。
慣れた手つきで茶を淹れるスヴェトザールを見ながら、サプフィールは何か言いたげに口を開いたが、また臆したように俯いた。
「……」
ポットの中で茶葉を蒸らす間、また沈黙が流れる。薄暗い部屋の中、暖炉の火が部屋を不規則に照らす。
スヴェトザールとサプフィールは砂時計の砂が落ちていくのを、2人してただじっと見つめていた。
馬車などの移動中はもう少し口数があったはずだ。スヴェトザールはそう思い返すも、きっと疲れているんだろうと結論づけた。
やがて蒸し終わり、茶こしで注がれた1人分の紅茶がサプフィールに差し出される。
「どうぞ。火傷に気を付けて」
「あ、ありがとうございます……」
そっとティーカップを受け取り、何度か息を吹いて冷ましてから口を付けた。
こくり、と飲む音が小さく耳に届く。
「……おいしいです」
ほんの少しだけ綻んだ表情でサプフィールはそう言った。
スヴェトザールはサプフィールが紅茶を飲み終わるまでの間、静かにその様子を眺めていた。
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