第4章 冬の日
部屋に残されたまだ温かい紅茶とクッキーを少しの間見つめる。
「…………」
スヴェトザールはハンドベルを鳴らした。
間もなく近くの部屋で待機していた従者が執務室に駆けつける。
「いかがなさいましたか?」
「……妻が茶を持ってきてくれた」
「ほほ、それはとても素敵なことですね。先ほど私がお持ちした紅茶は冷めた頃でしょうし、下げておきます」
サプフィールの侍女が置いた方とは違うティーカップを従者が回収する。
「茶を持ってきたこととは別に、目的があったはずだ。本来私に何か言うために訪ねてきたと思うんだが……どうも言いづらかったらしい。私相手だと萎縮してしまうようだ。ディーマ、お前からそれとなく要望を聞いておいてくれ」
「左様ですか……かしこまりました」
従者のドミトリーが一礼して執務室を後にする。
スヴェトザールはまだ確認が済んでいない書類に目を通す前に、サプフィールからの紅茶を飲むことにした。
わざわざ執務室に来るくらいだ。なにか我慢しがたい不便があったのかもしれない。
寒かったからか。贈り物が気に入らなかったか。屋敷の使用人に至らない点があったか。
分からない。衣食住は最大限快適に過ごせるように気を配ってはいるものの、王都育ちの令嬢がどの程度の暮らしを当然としてきたのか、スヴェトザールには知る由もない。
政略結婚で一年の半分が冬であるような土地に連れてきたのだから、夫として責任を持ち、不自由なく暮らせるようにしているつもりではあるのに。
スヴェトザールはわずかにかじかんだ指先をカップの側面で温めながら、執務に戻るまでのひととき、サプフィールの悩みについて考えて過ごした。