第4章 冬の日
「別に避けているわけではないでしょう。旦那様は領主として日々仕事に追われているのです。今だって、執務室で書類に囲まれて過ごしていらっしゃるはずですよ」
それは知っている。外での仕事や来客がないとき、スヴェトザールはいつだって夕食以外は執務室内でばかり過ごしていた。
「それに度々、旦那様はサプフィール様に宝飾品やドレスなどを贈ってくださっているではありませんか。愛されている証拠ですよ」
「たしかに色々貰ってるけど……」
それを渡しに来るのは使用人だ。スヴェトザール本人ではない。
「……何贈るか考える暇があるなら、その時間を使って私の部屋を訪ねてくれればいいのに」
ソーニャにしか聞こえない声でサプフィールはそう愚痴る。
最近の昼間にした会話なんて外仕事で出かけるのを見送ったり、女性客の接待を頼まれたりするような事務的なことばかり。
実家の両親は恋愛劇も押し黙るようなコミュニケーション過多な人たちだったのに。
「別に政略結婚に夢見てるわけじゃなかったけど……やっぱり寂しいよ」
たとえ家同士が決めた仲だとしても、夫婦とはもっと頻繁に個人的な馴れ合いをするものだと思っていた。
思っていたのに。現実は冬と同じくらい厳しい。
「では、サプフィール様から会いに行かれるのはどうでしょうか?」
「ええっ?でも、スヴェトザール様はいま仕事中だし……」
ソーニャの提案にサプフィールが口ごもる。
「仕事中だからこそです。おそらく執務室はこの温室ほどは暖かくありません。暖炉は焚いてあるでしょうが、肌寒いなか厚着して執務に取り掛かられているはずです」
「だよねぇ……」
この温室ですら、重ね着をしてようやく快適に過ごせている。
人が頻繁に出入りしたり、執務机と暖炉がそこまで近くなかったりするのだから暖かい室温とは程遠いだろう。
「そんな状況でサプフィール様が暖かい紅茶を持って入って来られたら……さぞかしお喜びになると思いませんか?」
こそっと口添えするようにソーニャが身を屈めながらサプフィールにそう言った。