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愛しのサプフィール

第4章 冬の日


コズロフ伯爵家にサプフィールが嫁いでから一ヶ月半ほどが経った。
11月の中頃。本格的な冬が到来している。ほぼ毎日雪が降っていて、通路を歩くだけでも外の凍えるような冷たさが伝わってくる。
聞けば降雪量は例年通りらしい。領民たちはこんな寒さの中どうやって耐え凌いでいるんだろう。
サプフィールは冬が来る前に携わった冬服や毛布を配る慈善活動の日を思い出しながら、窓の外を見た。
「サプフィール様、午後はどう過ごされますか」
少し後ろでソーニャが尋ねる。
現在の時刻は正午過ぎ。昼食も終わり、外出や来客の予定もない。
「温室で……本でも読もうかな」
雪が降りしきる窓から離れ、サプフィールは本を選ぶため一旦自室に戻ることにした。
「とはいえ、あんまり本持ってないんだけどね」
独り言を言いながらスカスカの立派な本棚を見上げる。
ソーニャは温室でお茶が飲めるよう準備をすると言って先に行ってしまった。後で温室で合流する手筈になっている。
「うーん……」
3択しかない。あんまり面白くなかった色恋沙汰の人情本と、嫁入りの馬車の中で何度も読み返すはめになった怪奇ものの民話集と、昔に両親からプレゼントされた植物図鑑だ。
「これしかないや」
大きくて分厚い植物図鑑を引きずり出し、冷気の漂う廊下をそそくさと歩いて温室に向かう。
1階にあるガラスの温室の前に着くと、丁度ソーニャがワゴンテーブルを押して入ろうとしているところだった。
「ソーニャ」
近付くとサモワールからほんのりと木炭の熱が伝わってきた。
「冷えますので早く入られてください」
先に通され、サプフィールは温室に設置されているティーテーブルの上に持ってきた本を置く。
ガラス張りの温室はさほど広くなく、天井もやや低い。植物との距離が近いため多少の圧迫感はあるが、サプフィールにとっては居心地のいいものだった。
足元には温水を巡らせた暖房管が通り、外の寒さが嘘のように暖かい。夫人としての仕事がない日は、自然とここへ足が向くようになっていた。
ワゴンを押してきたソーニャがテーブルの脇に止めると、茶器がコトリと小さく鳴った。
あらかじめ温められていたカップにポットの中の抽出液を少し入れ、サプフィールに聞く。
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