【H×H ミルキ】夏の大作戦 〜軽井沢に行きませんか?〜
第2章 思わぬ出逢い
「あの車だ」
三人の視線がその先へ向く。
クロロが親指で示したのは、ロータリーの端に停められたクラシックな車だった。
角ばった車体に丸いヘッドライト。
どこか昔の映画に出てきそうな、無骨で愛嬌のあるデザインだ。
「かわいい……」
夏希が思わず声を漏らす。
「じゃ、行こっか♡」
ヒソカは軽い足取りで歩き出すと、後部座席のドアを開ける。
「どうぞ」
「わぁ! ありがとうございます!」
夏希は満面の笑みで礼を言うと、ためらいなく車へ乗り込んでしまう。
「ちょ、夏希……!」
穂乃果が思わず呼び止める。
「大丈夫だって! 方向同じなんでしょ?」
「でも……」
穂乃果が戸惑っていると、莉子が小さく息をついた。
「でもまあ、ここで一時間歩くのは正直きついかもね……」
照り返しの強い日差しがアスファルトを白く照らしている。
避暑地と呼ばれる軽井沢とはいえ、この日の暑さは東京とほとんど変わらなかった。
(あ……! バスがこないなら、急がないとミルキ君との待ち合わせに遅れちゃう)
穂乃果はもう一度、目の前の三人を見る。
「……お願いします」
小さく頭を下げると、クロロは一つ頷いた。
「乗ってくれ」
見た目とは裏腹に車内は驚くほど清潔だった。
黒い革張りのシートは程よい硬さがあり、ひんやりと冷えた空気が肌を撫でる。
木々の香りを思わせる落ち着いた芳香剤。
大きな窓からは軽井沢の緑がよく見えた。
「……すごい」
思わず穂乃果の口から声が漏れる。
穂乃果は車に詳しくない。
それでも、三重の実家の四人家族には十分快適だったアルファードとも、母の軽自動車ともまるで違うことだけは分かった。
(リゾート地だからかな……)
軽井沢の木立によく似合う、不思議な雰囲気の車。
まるで森の奥へ冒険に出かけるためだけに用意されたようだった。
「広っ!」
夏希は後部座席ではしゃぎながらシートを見回している。
「乗り心地いいね!」
「夏希、ちょっと静かに」
莉子が苦笑すると、ヒソカはくすりと笑った。
「気にしなくていいよ♤」
「旅行は楽しんだ者勝ちだからね♡」
ドアが閉められ、外の喧騒が遠ざかった。
「そろそろ、出すよ」
ギアをドライブに入れたイルミが、アクセルを踏み込んだ。