【H×H ミルキ】夏の大作戦 〜軽井沢に行きませんか?〜
第1章 震える指先
デート場所を軽井沢に決めたのには理由があった。
ネット上では公表していないが、ミルキは財閥・ゾルディックの御曹司だ。今やその名は世界中に知れ渡っている。
軽井沢の別荘地周辺には、ゾルディック系列のホテルやレストラン、ショップが数多く立ち並ぶ。そこはミルキにとって、まさに自分の庭のような場所だった。
ならば土地勘のある自分が案内役になれる。
穂乃果をスマートにリードできるはずだ――ミルキはそう企んでいた。
ミルキは部屋のモニターを見つめた。
軽井沢周辺。
Googleマップ。
口コミサイト。
天気予報。
観光客の混雑予測。
AIにも同時にプランを組ませる。
「よっしゃ!」
カフェ。
ランチ。
候補は三件。
雨天時の代替プラン。
駅から別荘までの移動時間。
徒歩、車、渋滞時まで――すべて計算済み。
「完璧だ」
ミルキは満足そうに深く頷く。
「これなら絶対失敗しない」
しかし。
ふと、画面の隅でカーソルが止まる。
「……いや、待て」
ミルキの表情が固まる。
「俺……」
一番大事なことを忘れていた。
「どうやって二人きりになるんだ?」
部屋が静まり返る。
穂乃果の友達も誘ったのは、もちろん心理的なハードルを下げるためだ。いきなり二人きりで泊まりに行こうと言われても、警戒されるに決まっている。
しかしミルキはそもそも友達などいない。誰か協力者を買収する必要があった。
数秒後。
「……」
ミルキはスマホを手に取った。
「仕事、頼める? 報酬は……はぁ? ドイツの新車?」
『無理ならやらない』
電話を切ろうとする気配に、ミルキは慌てて引き留める。
「わかった。それでいい。ただし、こっちの条件は絶対に守ってくれよ」
『了解』
短く返ってきた声は、淡々としているのに妙に頼もしかった。
「頼んだぜ」