【H×H ミルキ】夏の大作戦 〜軽井沢に行きませんか?〜
第5章 二人きりの散歩道
ズンズン歩いていくクロロに、半歩遅れて莉子がついて歩く。
「趣味か……特にないな。強いて挙げるなら、読書か」
「へえ」
「古今東西、いろんな本を読んでいると、思いがけない言葉に出会う。そこから曲の着想を得ることもある」
「そうやってオリジナル曲を作ってるんですか?」
「まあな。しかし、完全なオリジナルなんてものは存在しない。突き詰めれば、引用の組み合わせだ」
「確かに、そうかもしれないですね」
「厄介なのは、今は引用元が簡単に割れることだな。意図していなくても、既存のものと似ていれば使えないこともある」
「それは大変ですね」
「仕方ないさ。結局、俺たちは巨人の肩の上に立っている」
クロロは淡々と言って、少しだけ遠くへ視線をやった。
「それでも、本は面白い。時代も国も、現実か空想かさえ関係ない。一冊開けば、どこにでも行ける」
「……」
「退屈する暇がない」
ふと、クロロが足を止めた。
「たしか。去年できた時には、このカフェはなかったな」
「そうなんですか?」
「ああ。この豆は……少し気になるな」
「……私も本、好きです。持ってきてます」
「そうか。読書がてら昼下がりのコーヒーブレイクと行くか?」
「ぜひ、お供させてください!」
席について注文を済ませ、漂ってくるコーヒーの香りにほっと息をつく。
そこで莉子は、ふと思った。
――待って。
私、なんの本持ってきたっけ?
確かベッドに転がってた一冊をバッグに放り込んで――。
(…………)
思い出した瞬間、莉子の顔が蒼白になる。