【H×H ミルキ】夏の大作戦 〜軽井沢に行きませんか?〜
第5章 二人きりの散歩道
再び歩き出すイルミの背を追いかけながら、穂乃果はふと気づく。
ヒソカと夏希が消えた。
「あ、あれ夏希」
「あっち」
「……」
ふたりは木陰でキスを交わしていた。
「大丈夫。後で合流できる。あいつらはひとまず置いてこう」
イルミが、これ見よがしに腕時計へ視線を落とす。
つられて穂乃果も文字盤を見た。
(……あれ? さっきまでスマホ見てたのに、なんで時計?)
そう思ったのも束の間、別のところに目がいく。
手首に巻かれた、黒い文字盤の腕時計。派手ではないのに、金属の縁もベルトも妙に上品で、どう見ても安物には見えない。
(これ……もしかして、すっごく高いやつ?)
急に近くで見るのが怖くなって、穂乃果はそっと視線を逸らした。
「……もう時間ないね」
「は、はい」
イルミの言うとおり、待ち合わせの時間までもうあまりない。
穂乃果が慌てて歩き出そうとした、その時だった。
「待って」
「え?」
イルミが不意に足を止め、その場にしゃがみ込む。
何かと思えば、穂乃果のスニーカーへ手を伸ばした。
「靴紐、緩んでる」
「え……」
言われて初めて気づいた。
ほんのわずかにほどけかけた紐を、イルミの長い指がつまむ。
「危ないから」
それだけ言うと、一度きちんと紐を解き、わざわざ丁寧に結び直してくれる。
「す、すみません……」
歩きやすいようにと選んできたスニーカーだ。
足元まで分厚い生地に覆われているのに、靴紐を結ばれているだけで、妙にそこを意識してしまう。
俯いたイルミの長い髪が、さらりと風に揺れた。
同じ風が、穂乃果のスカートの裾をふわりと撫でていく。
(……なんで、こんなに恥ずかしいんだろ)