【H×H ミルキ】夏の大作戦 〜軽井沢に行きませんか?〜
第3章 賑わう車中
少しの間、車中の会話が途切れる。
おもむろにクロロは助手席の窓を開けた。
ウィーン。
ガラスがゆっくりと車体の中へ沈んでいく。
前方から吹き込む風が、さぁ――……とクロロの髪を攫った。
前髪が揺れ、形の良い額が露わになる。
クロロはしばらく何も言わず、風に吹かれながら外を眺めていた。
(うわ……雰囲気あるなぁ)
莉子は思わず見惚れてしまう。
不意にイルミが口を開いた。
「開けるなよ。せっかく冷えた空気が逃げるだろ」
「ふっ。ケチケチするな。たかだか窓一枚だ」
「金の問題じゃないから。クロロSDGsって知ってる?」
「あっ、それ持続可能な社会を目指そうってことだよね!」
「うんうん。保育園の頃から散々教わったよ」
パチパチパチパチ。
穂乃果は思わず拍手した。
「イル君、そういうところちゃんとしてるんですね! 素敵です!」
イルミは前を向いたままスイッチを押す。
ウィーン。
開いたばかりの窓が静かに閉まっていく。
「当然だと思うけど」
風が止み、前髪がふわりとクロロの額に落ちて影ができる。
「ふっ。SDGsか……覚えておこう」
(メンタル強っ……)
終始キザな振る舞いを崩さないクロロを斜め後ろの座席から見ているうちに莉子ですら、「団長」という肩書きには自分の知らない何か深い意味があるのではないかと思い始めていた。
「お前たち、喉乾かないか?」
クロロが振り向きざまに尋ねる。
「乾いた!」
夏希が勢いよく手を挙げる。
「笑いすぎて、めっちゃ喉乾いた!」
「そうか」
クロロは頷く。
「なら、そこに行きつけの店がある。寄っていくか?」
「クロロ。それってウチの店?」
イルミが横目で尋ねる。
「ゾルゾル歌広場♡」
「良かったら、この出会いを祝して俺から一曲振る舞おう」
「まあ、あそこなら弟につけとく」
イルミはあっさり頷く。
「やったー!」
夏希が歓声を上げる。
「イル君、太っ腹!」
「別に。俺の金じゃないし」