第5章 独裁者
椿に明らかに苛々して落ち着きのない様子を見て、逆に悟は冷静になれた。
「何でって?」
低い悟の声に、椿は悟を見た。
悟の顔を確認すると同時に、悟の手が椿に伸びてきた。
顎を掴まれて、顔を持ち上げられる様に悟に向かされた。
手の力が痛くて椿の顔が歪んだ。
それを分かっていても、悟は手を緩めない。
ズイッと悟の顔が椿に近づいた。
「…あの犬が毎晩ご主人様のベッドで寝てると聞いた。」
チラッと悟はベッドを見た。
椿のベッドはダブル以上ありそうで、2人で寝るには十分過ぎるほど大きかった。
「……………。」
意外だった悟の言葉に、椿はしばらく唖然とした。
どうやらこの男は、昴が自分と寝ている事に怒っているらしい。
そう理解出来た時に、椿はハッと笑った。
「……随分と面白い事言うのね…。」
椿は自分を掴んでいる悟の手首を掴んだ。