第5章 独裁者
「あの子はね、とても聞き分けのいい子なの。私が触れていいと言うまで勝手に触れたりしないわ。」
今の悟の様に。
悟の手を剥がしながら、椿は続けた。
椿からしたら、直哉や悟の方が躾がなっていない猛獣だ。
「なら、椿からベッドに招き入れたと?」
「……………。」
椿は苛立ちを隠さない悟が不思議だった。
何故悟は自分を棚に上げて椿に怒っているのだろう。
呆れた目を向けて悟を見た。
「……貴方が何を怒っているか分からないけど…。私が何をしようとも、貴方には及ばないと思うけど。」
悟の素行は全て知っている。
最近こそ大人しくしているみたいだが、その前までどれだけ不特定多数の女性と関係を持っていたのか。
「僕がしているから椿も同じ事をしているって?」
その言葉に椿は眉を顰める。
同じ事なんてしていないから。
確かに悪夢を見て気持ちが昂った時は、昴に慰めて貰っている。