第5章 独裁者
椿は縋る様に悟に言った。
だけど、悟の表情が変わる事は無かった。
「……なんや取り込んどる様やし……。」
そんな2人を見て、直哉は頭を掻きながら声を掛ける。
直哉の言葉に、椿は彼を見た。
先程直哉が椿の体に触れているのも見ていた。
悟が直哉に対して今怒りが湧いていないのは、それ以上に昴に対して怒っているからだ。
「まぁ……また話しようや椿ちゃん。」
直哉がそう言うと、椿は顔を歪めた。
悟が椿にまた会いに来ると言う直哉にさほど怒りが湧かないのは、この椿の顔を見ているからだ。
椿は直哉に対して好意的な感情は一切無い。
そう、悟にとっての問題は何処までいっても『一条昴』だった。
「早く、昴を運んで!!」
モタモタしている使用人に、椿は再度叫んだ。
悟を怖がりながらも、使用人達はやっと部屋の中に入って来る。