第1章 五条悟の婚約者
まだ小さな呪力しか無い。
悟以外が見ても、まさかその小さな呪力がその奥に術式を持っているなんて分からないだろう。
「……何処で拾ってきたんだ? そんな野良犬。」
「……………。」
悟の質問に、椿は答えなかった。
しかも禪院家に隠れて育てろと?
絶対に厄介ごとじゃ無いか。
第一椿は非術師だ。
昴の呪力に気がつくはずが無い。
そんな椿が術師を連れて来たのだ。
まさかと思って、悟は昴から顔を離して椿を見た。
「十種影法術?」
禪院家が喉から手が出るほど欲しがっている相伝術式。
呪力も無い椿がその使い手を連れて来ただと?
しかも目の前の昴は、その術式の痕跡さえ見せていない。
何故昴が十種影法術を使うと分かったのだろうか。
椿は禪院家相伝のその術式を聞いても、表情を変えずに目を伏せるだけだった。
いつもと同じ黒いワンピースを着ている魔女が。
この時ほど悟の感情を刺激した事は無かった。