第1章 五条悟の婚約者
「16歳までに、その術式ってやつを使いこなせる様にして。」
伊集院家令嬢からの命令。
断れるはずも無かった。
「……昴……。」
呆然とする悟をよそに、椿は昴に向かって優しい笑みを見せた。
まるで宝物を見る様なその笑みに、悟の背中にゾクリと悪寒が走った。
「16歳に迎えに来るから…それまでここで鍛錬してね。」
「……はい… 椿さん。」
まるで2人だけの物語を見せられている様だった。
この空間に、五条家次期当主の悟の意見はいらなかった。
目眩がしそうなその光景を見ながら、悟は目を顰めた。
この女はこの為に五条家を選んだのでは?
そんな不信感を抱きながら、椿を見ていた。
椿が悟の視線に気が付いて、悟に目線を送った。
その表情はいつもの魔女の表情だった。
その後ろに、椿と同じ様な無表情の犬っころ。
ああ…そうだ。
この命令には、断るという選択は無い。