第2章 イかれた婚約者
「今日も…今日も…殺された…『アイツ』に!!ああー!!呪霊にグチャグチャにされて!!」
そう昴の腕を掴みながら血走った目を向ける椿に、一瞬昴は顔を顰めた。
もちろんこの部屋に呪霊はいない。
「……大丈夫ですよ…、すぐに落ち着きますから…。」
そう言って昴はベッドの脇にあるチェストから注射器の入ったケースを取り出す。
中の薬は強力な安定剤だった。
もうこの頃は、錠剤の薬では椿には効かなかった。
暴れる椿を押さえつけて、慣れた様に椿の体に薬を投入すると、椿の呼吸が段々と鎮まって、体の震えも止まってくる。
はぁ…と椿が大きく息を吐いたのを見て、昴は椿を抱き上げた。
そしてそのままベッドに椿を寝かせる。
伊集院家に来てから、毎晩昴はこの椿の姿を見ていた。
『伊集院家のイカれた令嬢』は言葉通り『気がふれた令嬢』と言う意味だった。