第2章 イかれた婚約者
椿は毎夜、自分が殺される『夢』を見ているのだと言う。
もうずっと、はるか昔から。
長年見ている椿の姿に、昴は目を細める。
落ち着きを取り戻したのか、ベッドに寝かせた椿の呼吸はだいぶ落ち着いている。
「……昴…。」
薄っすら目を開けて、涙目で昴に縋る様に手を伸ばす。
しばらくその椿を見下ろした後に、昴はゆっくりとその手を取った。
昴の手を握ると、安心した様に椿は目を閉じた。
「あんたが生きてる事が、私の救いだよ。」
そう言って、涙で濡れた頬に、スリッと昴の手をくっ付ける。
椿がそう言う理由は、彼女の夢の中では昴はとっくに死んでいるかららしい。
夢の中と同じ様に自分が死なない様に、椿は抗っているのだ。
そしてそのカードが、『一条昴』と『五条悟』だった。
「………慰めますか?」
昴がそう言うと、椿の目がゆっくりと開いた。
その椿の目を見て、昴はベッドに入ると、椿をぎゅっと抱き締めた。
悪魔にうなされる幼子を安心させる様に。
『伊集院家の令嬢はイカれている』