第2章 イかれた婚約者
「?」
何故か引き返して来た悟が、ズカズカとまた、自分の方に向かって来るのを、椿は警戒した顔で見ていた。
グイッと椿の胸元を掴むと、悟は自分が乱した服装を整え始めた。
綺麗に首元までしっかりとボタンを付けられて、椿は悟の行動に呆然としていた。
訳が分からなく、悟を見ている椿の顔を掴んで顔を近付ける。
「あの犬っころを部屋に戻す時には、その表情を何とかしろよ。」
耳元で聞こえる悟の言葉に、椿の顔がかぁっと熱くなった。
先程の余韻を残している自分の表情を晒されたからだ。
そう言って悟はまた椿から離れると、再び部屋の外に出た。
そして目が合った昴に、今度は睨んで言葉を掛けた。
「お前…、椿が呼ぶまで絶対に部屋に入るなよ。」
それだけ昴に言うと、悟はそのまま椿の部屋を後にした。
そんな悟の背中を、昴は相変わらず無表情で見送る。