第2章 イかれた婚約者
昴は『無量空処』を察してすぐに簡易領域で対応したが持たないだろう。
圧倒的な力の差。
「早く、犬っころを部屋から追い出せよ。」
それは椿に向けて言われた言葉だった。
冷たい悟の目を見た後に、椿は昴に目配せした。
やっと解かれた悟の領域から放たれた昴は、そのまま短刀をしまって部屋から出て行く。
その時の昴の表情からすると、特別に悔しがるとかも無くて、ただ淡々と自分の仕事をしているという感じだった。
そう……ただの雇用主と就業者だ。
それ以上の関係は2人には無いと分かっているのに、何故か昔から椿の犬の昴が気に入らない。
昴が部屋から出て行ったのを確認して、悟は椿から体を離した。
安堵した様に、小さなため息を吐いた椿を横目で見る。
「……ちゃんと話をしようか…、どうして顔だけしか知らない僕と結婚する訳?」
再びソファに座った悟が椿を見ながら言った。
椿はしばらく立っていたが、諦めた様に悟の前に座る。