第2章 イかれた婚約者
「……知ってたの?」
そう聞く悟の声が少し震えた。
怖いじゃん。
知っていて何も言ってこない女なんて。
付き合ってない彼女達ですら、他の女性の影を見つけたら大変だったのに。
「ああ、別にそれで腹を立てたりしてないから安心して。」
固まってしまった悟に、椿はそう言うとスクッと立ち上がった。
悟がテーブルに乗ったので、下敷きになっている書類を救出する。
何事も無かった様に、また仕事を始めようとする椿を見て、悟は我に返った。
「……何言ってるだ?」
一段低くなった悟の声色に、椿は書類から悟に目を移した。
「別に、悟が他の女性と何をしても構わないと言っているのよ、結婚さえしてくれたら。私はそのまま五条家に入って貴方の子供を産むでしょうから、貴方は貴方で今まで通り好きに過ごせばいいわよ。」
椿のその言葉を聞いて、今まで感じた事の無い怒りが、腹の底から沸いてきた。
悟は腰を上げて、椿に詰め寄った。