第2章 イかれた婚約者
複数の会社を自分で起業して経営している椿が忙しいのは知っている。
しかし、財閥を継承するのは兄だと分かっているはずだ。
女の椿が出来る事は、良家に嫁いで少しでも伊集院家に貢献する事だ。
それが決まっている椿が、唯一選べたのはその相手だけだった。
それで椿の役目は果たしたはずなのに、椿は更に自身の会社を起こしたと聞いた時は、その意図が分からなかった。
そして今、自分の役目の婚約者という立場より、経営者を優先する椿が理解出来ない。
悟が来たなら、悟に気に入られる様に着飾ったり、悟の気を引く方がよっぽど伊集院家の為になるのだから。
それなのに、悟が部屋に入ってきても、目線も合わせずいつもの真っ黒なスーツに身を包む椿に、悟は何を考えているか分からなくて苛々する。
更にイライラさせるのは、やはり一条昴の存在だった。