第2章 イかれた婚約者
執務室だと?
その単語に悟は目を細めた。
婚約者の自分が会いに来たと言うのに、会う場所は椿の部屋でも、応接室でも無い。
仕事の片手間に会ってやっているという椿の意思が見えて不愉快な気持ちになった。
執務室の前に来ると、昴はドアをノックした。
「椿さん、五条様がお見えになりました。」
立派な執事の様に、昴は悟を椿の元に導いた。
重たい木製のドアが開くと、大きな机の上に、書類の束を積み重ねて、睨みながら吟味している椿が居た。
どうやら『仕事が忙しい』は言い訳では無さそうだ。
それだけでも、どこかホッとした悟が居た。
「ごめんね、仕事が片付かなくて。」
悟の顔を見ないで言う椿に、申し訳なさは感じなかった。
いつもの様に隙を全く見せない、ビッチリと着た黒のスーツで、椿は目を伏せながら眉間に皺を寄せて書類を眺めている。