第2章 イかれた婚約者
伊集院家の敷地には100人以上の使用人が居るだろう。
貴族階級が無くなった事など忘れさせる様な階級別のメイドやフットマンが悟を見る度に一礼する。
純和風の五条家とはまた違う華やかさのある廊下を歩いていると、ふと大きな窓から中庭の様子が見えた。
まだ幼さの残る少年がページボーイとして庭師の仕事を手伝っている。
その光景を見て、悟は幼い頃の『一条昴』を思い出して、不快な気持ちになる。
その悟の前に、スッと昴が現れた。
その容姿は、あの雑用の子供の様だった面影はもう無く。
紛う事なき伊集院家の執事の姿をした昴がそこに居た。
悟が渡した腰に据えた呪具の短刀は、昴の術式を誤魔化す為の小道具だった。
昴は獲物を持って呪霊を祓うと見せかける、禪院家への目眩ましだ。
「執務室にご案内します。」
悟にペロリと首を垂れながら昴は言った。
ハウススチュワードの昴を見れば、誰が昴に与えた階級なのかハッキリと分かる。