第9章 よくない変化
「この結婚は悟が好きだから私が決めたのよ。彼が一時遊んでたからって、私の心は変わらないわ。」
椿はそう言うと、「ねぇ?」と悟を見上げて笑いながら相槌を促した。
『あなたが嫌いだから、悟に決めたのよ。』
そう罵倒したい気持ちを微塵も見せない。
「…………。」
悟はそんな椿に視線を落としたものの、その言葉に頷くことはしなかった。
なにも言わない悟に、椿がもう一度声をかけようとしたところ、大きな音に気が付いた大学の職員が集まってきた。
「伊集院様!大丈夫ですか!?」
慌ただしく、大勢の教員達が集まり、壊れたドアと中にいる椿達を交互に見る。
椿が落ち着いた態度で、教員達の対応をしていると、そのすぐ横を直哉が通り過ぎた。
かすかに彼の着物が肩をかすめると、椿は顔を上げて直哉を見た。
一瞬目が合うと、直哉はすぐにそのまま教会を出て行った。
(…なんでそんな顔をするのだろう。)