第8章 視えない悪夢
(あんな女と上手くやれる男なんかおらんわ。)
ずっとそう思っていたのに、椿の側に居る、一条昴を見た瞬間に鳩尾が強く軋んだ。
ーあの女の隣は、俺の場所や。
なぜそう思ったのか分からない。
だけど、その感情が全身の細胞まで行き渡ったようだった。
「……離して……。」
ギリギリと手首を掴む直哉に、椿は苦痛に顔を歪めながら言った。
「仕事が欲しいんやない。俺が欲しいんは、お前や。」
直哉のその言葉を聞いたときに、全身の血が逆流したようだった。
怒りで鳥肌が立ち、奥歯を強く噛み締めた。
ー散々、仕事を回せと嬲り続けたくせに。
悪夢の中の感情が、抑えられないほど溢れ出そうだった。
待ち続けたその言葉に、体が震えている。
いや、怒りで震えている。
もうどっちの感情が今の自分を支配しているか分からなかった。
「…… 椿…。」
感情が定まらなくて、沈黙した椿の顔に、直哉の手が触れた。