第8章 視えない悪夢
「っ…!」
直哉の手が椿の手首を掴み捻り上げた。
椿は反射的に顔を上げて、痛みで歪みながらも直哉を見上げた。
ーああ…、やっとあなたらしい顔になったわね。
椿を見下ろしている直哉は、上っ面の笑みを剥がして、鋭い眼光を向けていた。
見慣れたその顔の方がよっぽど、直哉に似合うと椿は思った。
「どうしてやろなぁ…。」
椿の手首を掴む力が強くなり、椿は余裕もなく痛みに顔を歪めた。
「顔くらいしか取り柄ない思てたのに……悟くんのものになるって分かっていると、無理矢理にでも奪いたくなるやんか。」
いつからやろなぁ。
この女が気に障って、無視出来なくなったのは。
初めて五条家で見た時は、能面の顔の女が五条悟を名指ししたのを見て、自分じゃなくてよかったとさえ思った。
それが五条家の繁栄に繋がることになると分かっていても、自分が犠牲になるなんて考えられなかった。
五条悟と椿が上手くいっていないと聞いても、さほど驚きもしなかった。