第8章 視えない悪夢
直哉の顔が近付いてきて、何をされるか分かっていても体が動かなかった。
しっかりと手首を掴まれて、椿は死にたくなるような気持ちで、その瞬間がくるのを見ているだけだった。
その時、底知れない呪力に直哉の背筋が凍りついた。
それと同時に、重たい教会の扉が蹴破られる音が響いた。
椿はすぐに扉の方に目をやった。
壊れた扉を踏みつけて、彼の靴が床を叩く音が反響して聞こえる。
オレンジ色に染まったステンドガラスを背に、青い六眼が夕陽を受け、硝子の欠片のように煌めいていた。
「…あと1ミリでも椿に近づいてみろ…。」
悟の怒気に全身を強張らせた直哉を見て、椿は目を細めて悟を見た。
「禪院家ぶっ潰すぞ。」
低音の心地よい声に胸が震えた。